Apr 16, 2010

モグラ噂のスパイとの付き合い方

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 サラリーマン諸兄は1月の給与明細の封筒に「平成22年分 給与所得の源泉徴収票」と書かれたA6サイズの小さな紙が入っていたと思う。これまで説明したとおり、年収から給与所得控除が引かれ、さらに奥さんの収入や子供の年齢によって決まった控除額が引かれ、所得税を計算するための課税所得が決定する。それに税率を掛けると税額が決まる。その結果が書かれているのが源泉徴収票だ。これを見れば昨年1年間にどれだけ稼いだか、いくら納税したかを知ることができる。一家の大黒柱の通信簿のようなものだ。

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●世界でも珍しい制度、だからこそ源泉徴収票を確認しよう

 では年収500万円、奥さんと子供1人、生命保険を10万円以上掛けているモデルケースで源泉徴収票を見てみよう。

 支払金額(年収)500万円だと給与所得控除は154万円となり、給与所得控除後の金額(給与所得)は346万円となる。

・給与の収入金額(年収)−給与所得控除=給与所得(例)500万円−154万円=346万円

 各種控除は、基礎控除38万円、奥さん(配偶者控除)38万円、子供(扶養控除)38万円、生命保険10万円以上で5万円、保険、年金等の社会保険が47万で、合計166万円の場合、給与所得の346万円から166万円を引いた180万円が課税所得となる。

・給与所得−各種控除=課税所得(例)346万円−166万円=180万円

 源泉徴収票を見ると支払金額に500万円、給与所得控除後の金額に346万円、所得控除の額の合計額に166万円と記載されてる。下段には配偶者(有)に*印、扶養親族(その他)に1人、社会保険料等の金額に47万円、生命保険料の控除額に5万円と書かれている。基礎控除は一律ということで記載はない。

 これで所得税額を計算する要素は全てそろった。はたして東国原慎太郎さんの所得税はいったいいくらになるのか。所得税は課税所得によって税率が異なってくる。課税所得と税率は以下の通りだ。

 表を見ると勘違いしやすいが、195万円の人は5%で200万円の人は10%になるわけではない。200万円の人は195万円の5%=9万7500円と、超えた5万円の10%=5000円を足した10万2500円が所得税となる。簡単に計算するために控除額が記載されている。計算の方法を式にすると

・課税所得×税率−控除額

となり、課税所得が200万円の場合、

・200万円×0.1−9万7500円=10万2500円

 東国原慎太郎さんの場合は課税所得が180万円なので、

・180万円×0.5=9万円

 となる。源泉徴収票の源泉徴収税額にはこの金額が記入されている。サラリーマンの場合は毎月の給料から所得税が引かれ(源泉徴収され)、年末の給料で最終確定した税額が年末調整されているので、すでに税金は納付済みとなる。源泉徴収票には給与所得控除の154万円と課税所得の180万円は記載されていないため、計算のロジックを知らないと分かりにくい。

 サラリーマンの年末調整は世界的には珍しい制度と言われている。サラリーマン自身は楽になる半面、国民に納税意識が育たないといった弊害も指摘されている。せめて用紙サイズを大きくしてもいいので、源泉徴収票を分かりやすくA-B、B-C、D×○%と計算ロジックが分かるようにすると税金への意識、政策への関心が高まるような気がする。

●子ども手当は増税か

 さて、子ども手当の導入で15歳以下の扶養控除がなくなる平成23年の所得税がどうなるか計算してみよう。仮に昇給もなく他の条件が全く同じだった場合、控除額が38万円減って166万円から128万円になり、課税所得はその分38万円増え180万円が218万円となる。

・給与所得−各種控除=課税所得(例)346万円−128万円=218万円

 218万円に対する所得税は、

・課税所得×税率−控除額(例)218万円×0.1−9万7500円=12万500円

 となり、3万500円の増税となる。

 個人事業主の場合は、確定申告後に決まった所得税を納付する。原稿料のように振り込まれる段階ですでに10%の源泉徴収されている場合は、その分を差し引いた額を納税する。納め過ぎている場合は1カ月ほどで還付される。完全後払い制なので、稼いだ金を使い果たしてしまうと翌年の春に大変なことになる。

 所得税額を最初の例で計算すると、

・売上(収入)−経費=所得(例)800万円−270万円=530万円
・所得−各種控除=課税所得(例)530万円−180万円=350万円

の場合は、

・350万円×0.2−42万7500円=27万2500円

となる。

 こちらも同じく扶養控除がなくなると、控除額が38万円減って180万円から142万円になり、課税所得はその分38万円増え350万円が388万円となる。

・所得−各種控除=課税所得(例)530万円−142万円=388万円

 388万円に対する所得税は、

・課税所得×税率−控除額(例)388万円×0.2−42万7500円=35万1000円

 となり、7万8500円の増税となる。

 どちらのケースも子ども手当が満額支給されれば年間31万2000円なので、増税によりマイナスになることはない。ただし毎月2万6000円がまるまる増えたとは思わない方がいいだろう。

●住民税の額は地域ごとに違うの?

 筆者は長年「○○市に住むと住民税が高い」という都市伝説を「へえ〜、そうなんだ」と思っていた。読者の中にも、「○○市は○○電器の本社があって、税収が多いから住民税が安い」などと聞いたことがあるかもしれない。なぜそういう話が広がったかは不明だが、住民税は、基本的には全国一律、どこに住んでも税額は変わらない。

 住民税は所得によって変化する所得割と、税額が一律の均等割からなっている。所得割は、市民税が課税所得の6%、県民税が4%、合計10%だ。均等割は市民税が3000円、県民税が1000円の合計4000円だ。表にすると以下のようになる。

 所得税の説明の中に「各種控除」というものがあった。基礎控除、扶養控除、生命保険控除といったものだ。所得税と住民税では、各種控除の額に差がある。主なものは以下の通りだ。

 東国原慎太郎さんの所得税の控除と比較してみると、社会保険料控除は同じで47万円、配偶者控除が38万円から33万円、扶養控除も38万円から33万円、生命保険料控除が5万円から3万5000円、基礎控除も38万円から33万円となるので、控除額の合計は166万円円から149万5000円と16万5000円減ることになる。

・所得税の控除=47万円+38万円+38万円+5万円+38万円=166万円
・住民税の控除=47万円+33万円+33万円+3.5万円+33万円=149.5万円

 課税所得額は所得346万円から住民税の控除を引くと、

・346万円−149.5万円=196.5万円

 となり、所得税の課税所得180万円より高くなる。この控除額の差で大きいのは、扶養控除の特定扶養親族=高校生と大学生の子供がいる家庭だ。高校生と大学生が一人ずついた場合、所得税では63万円×2=126万円の控除だが、住民税は45万円×2=90万円と、その差は36万円もある。

 少々話が複雑になるが、住民税にはさらに「調整控除額」なるものがある。国から地方への税源移譲が平成19年(2007年)に実施された。ざっくり言うと、所得税は所得に応じ10%、20%、30%、37%だったのを現在の5%、10%、20%、23%、33%、40%に変更、住民税は5%、10%、13%だったのを現在の一律10%とした。これによる税額の差が生じないように調整控除額なるものが設定されている。この例の場合は市民税を4500円、県民税を3000円差し引く。住民税の税率は市民税が6%、県民税が4%なので所得割は、

・市民税=196.5万円×6%−4500円(調整控除額)=11万3400万円
・県民税=196.5万円×4%−3000円(調整控除額)=7万5600万円

 となる。これに均等割の市民税3000円、県民税1000円を加えると、

・市民税=11万3400万円+3000円=11万6400円
・県民税=7万5600万円+1000円=7万4600円

 2つを合計すると、

・住民税=11万6400円+7万4600円=19万1000円

 が住民税となる。

●住民税も実は増税、子ども手当分を計算してみる

 住民税にも子ども手当による増税の影響はでてくる。扶養控除の33万円がなくなると、控除額が33万円減って149.5万円から116.5万円になり、課税所得はその分33万円増え196.5万円が229.5万円となる。調整控除額、均等割も計算すると住民税は23万円となり3万9000円の増税となる。所得税の増税分3万500円を合計した6万9500円が増税されるので、実質の子ども手当は年間31万2000円−6万9500円=24万2500円となる。

 冒頭で「住民税は基本的には全国一律」と書いたが、筆者が住む愛知県の場合「あいち森と緑づくり税」があり、県民税の均等割1000円に500円が上乗せされ住民税と一緒に徴収される。全国で30県ほど似たような税によって課税しているようだ。また名古屋市は河村たかし市長の公約である市民税10%減税を実施している。大村秀章愛知県知事も県民税10%減税を掲げており、名古屋市に住むと実質の住民税額は9%なりそうだ。

 納税の時期も住民税と所得税は異なっている。住民税は対象年の翌年に納税する仕組み。サラリーマンの場合、毎月所得税と住民税が天引きされているので、感覚的に理解しにくい。2010年の収入に対する所得税は毎月天引きされ、最終的に年末調整で2010年12月の給料で差異が修正され、納税がすべて済んでいる。住民税は2010年の課税所得額から計算したものを、2011年の6月から2012年の5月まで1年間で天引きする仕組みだ。子ども手当により増税となった住民税を納めるのは来年(2012年)の6月からとなる。

 個人事業主の場合は2010年の所得を2011年の2月から始まる確定申告で申請し、所得税は3月15日までに1年分をまとめて納税。住民税は2011年の6月、8月、10月、2012年1月の計4回に分けて納税を行う(一括も可能)。3カ月分をまとめて払うことと、自分自身が金融機関やコンビニで支払うので、「納税している」という実感をたっぷり味わうことができる。

●個人事業主の消費税を考える

 消費税の話をしよう。消費税といっても5%だ10%だという話ではない。個人事業主は独立してちょっと稼ぐと消費税の申告も必要という話だ。サラリーマンの方はあまり関係ないが参考程度にお付き合いいただきたい。

 消費者は1000円の製品を買うと5%上乗せして1050円を支払う。この50円の行方はどうなっているのだろうか。仮に「メーカー」→「卸業者」→「販売店(お店)」→「消費者」という流通形態で、それぞれの価格がメーカーは700円、卸業者は800円で販売したとしよう。

 メーカーは700円に5%の35円を乗せ735円を請求する。卸業者は800円に5%の40円を乗せ840円を請求することになる。販売店は消費者から1050円を受け取っているが、卸業者に840円を支払うので差額は210円。200円が利益で10円が消費税分となり、10円を納税する。卸業者は840円から735円を引いた105円から5円を納税する。メーカーは35円(実際にはメーカーも材料の仕入があるがここでは無視する)を納税する。消費者が払った50円の消費税は、販売店が10円、卸業者が5円、メーカーが35円を代行して納税する仕組みだ。

 現実にはそれほど単純ではなく、企業活動には仕入以外に諸々の経費が必要で、電気代にもPC購入費にも携帯代にも交通費にも消費税が上乗せされている。切手、印紙のように非課税の経費(仕入)もある。受け取った消費税額(課税売上高×(5/105))から支払った消費税額(課税仕入高×(5/105))を引いたものが納付する消費税額。さらに厳密には消費税は4%、地方消費税の1%を足して5%となっている。

●手元に残る“益税”は……

 では個人事業主の消費税はどうなるのか。消費税は前々年の売上高が1000万円以下の場合は免税事業者となり消費税を納める必要はない。独立してから2年間は前々年の売上がないので自動的に免税となる。免税事業者だからといって取引先に消費税を請求しないと、電気代、PC代、携帯代――と支払う経費に消費税が上乗せされているので損をしてしまう。例えば初年度の売上が1050万円、課税仕入高が315万円なら、消費税分の50万円−15万円=35万円が益税として手元に残ることになる。消費税を請求しないと、逆に15万円の損となる。こうした、消費税額の一部が事業者の手元に残る益税は……チョットうれししい。

 独立した年に1000万円を越えれば3年目は消費税を納めることになる。2008年(平成20年)に売上が1000万円を越えていれば、2010年(平成22年)は消費税の納付義務があるので、2010年の課税売上高から課税仕入高を引いた額の5%(正確には5/105)を申告、納付することになる。所得税の申告は3月15日までだが、消費税は3月31日までに申告する必要がある。ずっと1000万円を越えなければ消費税は納める必要がない。

 1000万円が多いか少ないかは業種による。家にこもって原稿を書く仕事で経費が100万円なら、1000万円の売上があれば充分と考えられるが、物販で1000万円の売上、仕入その他の経費が800万円だとかなり貧乏な生活となる。仕入れた物をそのまま販売する業態の場合は売上は1000万円を越える可能性が高い。

 2008年に売上が1000万円を越えると、2009年の秋頃に「消費税簡易課税制度選択届出書」なるものが送られてくる(来ない場合もあるらしい)。2009年のうちに届け出をすれば簡易課税で申告をすることも可能となる。

 簡易課税とは、事業の内容によって「みなし仕入率」でざっくりと消費税を決めてしまう方法だ。事業内容は5種に分類されている。

 計算式は、

・売上消費税−(売上消費税×みなし仕入率)=納付消費税額

 仮に小売業で非課税売上はなく課税売上が3150万円、売上消費税が150万円、みなし仕入率80%とすると、30万円が納付する消費税額となる

・150万円−(150万円×80%)=30万円

 実際の仕入消費税額が110万円の場合は原則課税だと納付消費税額は40万円になるので、簡易課税の方が得になる。逆に仕入消費税額が130万円の場合は原則課税だと納付消費税額20万円になるので、簡易課税を選択すると損をすることになる。原則課税の場合は切手、商品券、人件費など非課税の経費を細かく計算する必要がある。簡易課税は仕入の明細を無視できるので、事務作業は大幅に軽減される。どちらを選択するかは、過去の決算内容をみて判断すればいいだろう。

 2008年に売上が1000万円を越え、翌年1000万円を切った場合、2010年は課税事業者となるが、2010年中に「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出手続」を提出すれば2011年は免税事業者に戻ることができる。

 さて、次回はサラリーマンと個人事業主の節税について考えたい。【奥川浩彦,Business Media 誠】


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